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【笑説】憧れの女の子の部屋(第4章)

女の子の部屋

僕は本を読むのをやめてトイレに行くことにする。僕はデスキッチンにいる彼女に尋ねる。

 

「ちょっとごめん、トイレ借りていい?」

 

僕はよくこの質問をして思うのは、「ダメ」と言われたらどうしよう・・・ということ。勝手に使うのは失礼だし、かといってリビングでしてしまうのはなお失礼だ。だから一応断るんだけれども。僕はそんな日本人丸出しの発想をしてしまう。

 

「どうぞ。そこ左のドアだよ。あ、変なことしないでね?」

 

例えば?

まあいいや。僕はトイレに向かいつつ、そうだ、トイレがあった、トイレはきっと女の子らしく、ピンク色のスリッパが置いてあって、便座には可愛いキャラの書いたカバーがしてあって、タンクの上には花なんかがいけてあるんだ。トイレットペーパーは花柄のものを使って、開けた途端にラベンダーの香りが漂ってくるんだ。

僕は心してトイレの扉を開ける。

無臭だ。タンクの上には花の代わりに「脱臭炭」が置いてある。実に真っ黒な良質の炭だ。

僕はエステー化学の本社ビルの地下に徳川埋蔵金があるという噂をネット上で流してやろうかと画策する。そうすればショベルカーに乗った糸井重里あたりが本社ビルをひっくり返すに違いない。

そんな妄想をしつつスリッパを履く。それは僕が予想したようなピンク色ではなく、黄土色をしている。
そしてスリッパの中央に白い文字で「武蔵野公民館」と書いてある。

窃盗だ。もしくは武蔵野市の公民館がこの部屋に移転してきたかだ。

僕は諦めて便座のふたを開ける。便座カバーには明らかにケロケロケロッピをパクッた変なカエルが二匹。そしてその周りにそのカエルが産卵したと思われる卵が散乱している絵が描いてある。

僕は座るときにとても躊躇する。カエルの卵がつぶれてしまいそうな気がする。この便座カバーを作った会社と、それを買った彼女の出会いは実に運命的だ。これだからマーケットは面白い。

僕は座りながら扉に貼っているカレンダーに目をやる。日付け部分には、メモ書きするスペースがある。そこにランダムで「8」「12」「1」「12」と総ての今日までの毎日に記入してある。

なんの数字だろう?

さらに僕は壁のポスターに目をやる。

「いつもキレイにご利用いただき、ありがとうございます。」

コンビニでおなじみのポスターだ。

僕は嫌になって逆サイドの壁を見る。

「親父の小言」

のタイトルを筆頭にずらりとならんだ小言集。

モンテローザグループおなじみのヤツだ。それらを見ないようにして僕はトイレットペーパーを巻き取る。

トイレットペーパーには、「ライオン」「ペンギン」「チンパンジー」と書かれ、さらにそれに対応する動物の絵が描かれている。

・・・・・。

モンテローザグループおなじみのヤツだ。

間違いない。彼女は窃盗犯だ。まあ良いや。

トイレを出ると彼女に「ありがとう」という。

「どうだった?」

何が?お腹の調子かな?

「いや、普通だった。そういえばさ、あのカレンダーに毎日書いてある数字、5とか12とかって何なの?」
「めざましテレビの星座占いの順位。」
「・・・・・。」
「水瓶座ってめちゃくちゃ運が悪いの。頭にくるから毎日記入することにしたんだ。トイレに入るたびにイライラする。」

じゃあ、やめれば?

「明日は一位であることを祈るよ。」
「ありがとう。」

彼女は皮肉たっぷりに言う。

「ところで君は最近、公民館に用事があった?」
「公民館?ぜんぜん。」

彼女は僕の目を見ずに言った。

「なら良かった。」

僕は幸せそうに言った。

「もうすぐ料理はできるのかな?」
「あ、お待たせ。出来たよ。今盛り付けするね?」

なんだか僕は彼女と新婚生活でもしているような感覚に陥る。悪くない。この感覚だ。

5分後、用意された料理の前で僕は固まっている。

多いな~。

テーブルの上に所狭しと並べられた料理。そのどれもが体育会系の高校生レベルのボリュームだ。

「ちょっと作りすぎちゃったかも。」

満足気に彼女は言う。かなり作り過ぎたと僕は思う。

「お腹一杯になっちゃっても残さず食べてね?」

脅迫だ。

「あ!!ご飯炊いてなかった~!!すぐに炊くね?」

不幸中の幸い。

「いいよいいよ。」
「いいよいいよ~。」
「いいよいいよ。」
「いいってば。」
「いいって!」
「いいの?」
「いいよ。」

なんだこの会話。日本語って便利で難しい。

彼女は諦めて箸を取って言う。

「じゃあ、いただきましょう。鶴は千年、亀は万年、鶴さんのようにツルツル飲まず、亀さんのようによくカメカメ~!せーのっ、」
「あああ!ごめんちょっと!!」
「なに?」
「なにそれ?」
「え?やってないの?いただきますの儀式。」
「・・・。少なくともこれまでは・・・。」
「ふーん。鶴は千年、亀は万年・・・。」

オーケー、付き合おう。

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