今回は、タイトルにある通り「裁判員に選ばれた」私が、実際に経験した「選ばれ、実際に裁判を終えるまでの流れ」をできるだけ噛み砕いて体験レポートしていきます。2018年の最新裁判員情報です。
ネットで「裁判員」と検索していると、明らかに「古い情報」や「友達から聞いた的な又聞きの情報」が溢れ、私の実体験とは随分と違いがありましたので2018年で最新の情報をここに残しておきます。だいぶ裁判員制度も整備されましたのでここからはほぼ変動しないでしょう。
特にこれから裁判員を経験する方は是非ご一読ください。今の不安や疑問が解決し、貴重な体験を前向きに迎えられるよう少しでも力になれば幸いです。なんといっても、私の時はこう言った裁判員の体験記のような情報がなく、「一体何をやらされるのかわからない」ということが一番不安だったので。
まず前半では、裁判員候補になってから、実際に裁判員に選任されるまでの流れです。
11月15日に最高裁判所から通知が届き、
翌年の10月に召集通知、
11月に選任手続きを経て、
11月下旬には裁判開始。
12月に裁判、ならびに裁判員の任務も終了。
思えばあっという間でしたが、初めは不安やストレスに苛まれていた私も、終わってみれば「やって良かった」の一言。周囲の裁判員もみな同意見でした。
そんな素敵な裁判員生活をレポートしていきます。
【裁判員に選ばれた】裁判員候補〜選任・法廷の全日程体験レポート
裁判員制度とは?
まずはそもそも裁判員制度がどんなものなのか?そこからざっくりと確認をしていきましょう。
裁判員制度の目的
ということです。
しかし私が得たのはそれだけでなく、ニュースなど、メディアからの情報の受け取り方にも成長がみられました。私が今回裁判した事件も、ネットやニュースで話題になった事件なのですが、それまで「メディアから得ていた情報」と、「法廷で得た事実」とはあまりにもかけ離れていて(事実関係や被告人の事情など)驚きを隠せませんでした。
多くの事件で「被害者がかわいそう」ということに報道は終始していて、それはもちろんそうなのですが、あまりにも被告人を無視した報道が多い。私が関わった裁判の事件も、ネット上で調べると好き放題に書かれた「被告人の誹謗中傷」で溢れていました。
良く考えれば、報道とはいえ「視聴率」「購読者」が増えなければ金になりませんから、そのために面白おかしく、時にはねじ曲げられた報道がなされます。それを見聞きした者たちが憶測で意見し拡散され、もはや「罪を憎んで人を憎まず」の精神どころか、「人を知らずして不当な罪を科す」ような世間になっていることも痛感しました。
世に溢れる情報は「発信する側」にも責任はあるが、「受信する側」にもそれを見極め、取捨選択する責任があるのだということも、裁判員の教訓として得たものです。そしてこの発想は裁判期間中の評議でも重要になるポイントです。
裁判員裁判で扱う事件はどのようなもの?
- 殺人:人を殺した場合
- 強盗致死傷:強盗が,人にけがをさせ,あるいは,死亡させてしまった場合
- 傷害致死:人にけがをさせ,死亡させてしまった場合
- 危険運転致死:泥酔した状態で,自動車を運転して人をひき,死亡させてしまった場合
- 現住建造物等放火:人の住む家に放火した場合
- 身の代金目的誘拐:身の代金を取る目的で,人を誘拐した場合
- 保護責任者遺棄致死:子供に食事を与えず,放置したため死亡してしまった場合
- 覚せい剤取締法違反:財産上の利益を得る目的で覚せい剤を密輸入した場合
上記のような事件ですので、裁判の時には証拠写真として「ご遺体」や「凄惨な現場」の写真をみることもあります。
私も今回の裁判でご遺体の写真を証拠写真として確認しました。それを見なければ判断できない事実があるからです。このことに抵抗がある方は多いかと思いますが、実際に証拠としてみる写真は、裁判員の精神的なストレスにならないよう、「白黒にされ、目には黒いラインを、口腔にも黒塗りをなされる」など、最大限の工夫がなされています。
それでも私は、裁判を終えた今でも、ふと「ご遺体」や「凄惨な現場」の写真がフラッシュバックする事があります。いつかは忘れると思いますが、これは一緒に裁判をした他の裁判員の方も同様なようです。
ただ、そんな軽い後遺症のようなものはあるものの、それよりもはるかに得るモノがあるのが裁判員。胸を張ってこの経験に挑戦する事をお勧めします。
証拠写真を見る事によるPTSDが心配
裁判員裁判で、裁判員の方が普段は見慣れない証拠写真をみる事で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になった事例があります。それにより裁判所に申し立てをしたものの、請求は棄却されたという。
現在はそう言った裁判の場合、選任手続きの際に「今回の事件では○○の状態のご遺体の写真を証拠として確認する場面があるが大丈夫か。」という質問がなされます。当然この時点で無理だという方は挙手をし、相談する事が可能。
裁判員に選ばれる可能性があるのはどんな人?
20歳以上で、衆議院議員の選挙権のある方は原則だれでも裁判員に選ばれる可能性が有ります。
裁判員に選ばれない人・免除される人・なれない人
ただし、以下のような一部の方は除外されます。
- 国会議員
- 司法関係者
- 義務教育を終了していない人
- 大学教授
- 自衛官
- 知事や市区町村長
- 逮捕や勾留されている人
- 過去に禁固以上の刑に処された人
- 裁判員の遂行に著しい支障のある人
- 対象事件に一定以上の深い関わりを持つ人
実際に裁判員になるまでの流れ
さて、ここからは私が裁判員に選ばれるまでの流れを時系列で紹介していきます。
勘違いされている方が多いのですが、本当に法廷に立つ裁判員に選ばれるまではステップがいくつもあり、最終的な確率で言えば「1万1000人に1人」程度という、とてつもない確率です。
つまり最初の通知程度ではまだまだ選ばれない可能性の方が高いので、この時点で慌てる必要はありません。
それでは早速その最初の通知から確認していきます。
1、裁判員候補者へ通知・調査票が届く
毎年秋頃に、選挙権のある人たちから「くじ」で裁判員候補が選出され、11月に通知がきます。私の場合は11月15日でした。届くものは以下。
- 裁判員候補者名簿登録通知
- 調査票
- 裁判員制度Q&A
おおまかに言うと上記内容が最高裁判所から届きます。初めての通知は「最高裁判所」からだったのでかなり驚きました。正直、裁判所にお世話になるような事をした記憶がなかったので。
この通知では、あなたが裁判員になる事ができない人ではないかの確認を求められます。当てはまらない方は何もしなくてOK。70歳以上の方や、裁判員になる事ができない方は調査票を返信封筒に入れて郵送します。
2、事件ごとに裁判員候補者がくじで選ばれる
裁判員候補である一年間の間は、裁判ごとに「くじ」で選出される可能性があります。もちろんその年に一度「裁判員選任手続き」まで呼ばれれば、その年内にもう一度選出される事はありません。
また、「裁判員選任手続き」にすら呼ばれないまま一年が終われば、残念ながらそのまま終了です。毎年秋の「くじ」で候補者に選ばれるまでチャンスはお預けです。
3、選任手続きの通知・質問票が届く(呼出状)
「くじ」で選ばれた裁判員候補者には以下の案内(呼出状)が届きます。「選任手続き」への呼出状といったところです。選任手続きの6〜8週間前に各地方裁判所から通知が届きます。
- 裁判員になった場合の日程・スケジュール
- 選任手続きへの呼出状(手続き場所と日時が記載)
- 質問票(辞退の申し出可否)
- 裁判員制度のナビゲーション
おおむね上記の内容が届きます。この質問票に回答し、返信用封筒で郵送します。今回は、事態の有無にかかわらず全ての方が返信する必要があります。
この時点でもまだ法廷に立つことは確定していません。さらに抽選があります。それが各地方裁判所で行われる「選任手続き」です。
4、裁判員選任手続き(裁判所にて)
指定された日の朝9時30分に、指定の地方裁判所に行きます。残念ですが土日なんて気をきかせた日には呼ばれません。裁判員に関わる全日程はいずれも平日です。会社も休まなければいけません。
この選任手続きには、この裁判の候補に選ばれた30〜40名(裁判により異なる)が集められます。いよいよこの30〜40名の中から6名の裁判員と2名の補充裁判員が選ばれます。
裁判員選任手続きの持ち物
印鑑など。
必要なものは全て書類に書いてありますのでよくチェックしていきましょう。
裁判員選任手続きの会場まで
15分前に到着しましたが、裁判所内に入ると、どこに行けば良いかわかりやすく案内が出ていて、また選任手続きのスタッフも多数いますので、不安なく会場に到着できます。
裁判員選任手続き(1時間30分程度)の様子
基本的に録音や撮影NGの非公開ということなので、当たり障りのない事しか記載できませんが、入室するとすでに自分の席が決まっていて、席に自分の番号と必要書類などがまとめられたファイル、筆記用具が置いてあります。(選任手続き中はプライバシーの関係上、名前ではなくこの番号で呼ばれます。)
単純なくじで呼ばれているので年齢も性別もまちまちです。遅刻なのか欠席なのかわかりませんが時間になっても来ていない人がいましたが、関係なくスタートします。
- 裁判長が登場し、簡単な本日の手続きの手順が説明されます。
- 選任手続きの流れを説明するVTRを観ます。
- 今回裁判をする事件の概要が記載されたプリントが配られます。この事件と自分が、特別な関係がないかを確認します。この内容をメモをとったりする事は禁じられます。
- この事件とのかかわりについての質問が記載された用紙に回答していきます。
- 裁判長からいくつか質問をされます。「特別な事情で辞退の希望」「裁判員の全日程に参加可能か」「証拠写真にご遺体の写真があるが耐えうるか」など。
- 個別の事情を説明したい希望がある方のみ、1人ずつ別室に呼ばれます。「介護が必要な人が家にいて困難」「育児中だが預ける場所がない」「どうしても自分がいないといけない仕事がある」など、特別な事情を相談します。
この間、他の人は休憩になります。
いよいよ裁判員が決定
個別相談が終わると、辞退が認められた方を除いていよいよ抽選が開始されます。パソコンによる公平な抽選との事です。どのタイミングで抽選されたのかは判別できませんでしたが、会場前方に番号がかかれた札が貼り出されます。
私の番号は一番最初に張り出されました。これで確定です。
先に裁判員6名の番号が、その後補充裁判員2名の番号が貼り出されます。
5、裁判員・補充裁判員に選ばれなかった方は
これに漏れた方は、残念ながらその年の裁判員になるチャンスは終了ということになります。終了は11時頃です。ただ、そのまま帰されるのではなく、希望者には法廷見学ツアーや法服を着る体験などを設けてくれます。そうない機会なので是非参加しましょう。
6、裁判員選任手続きの日の日当は?
選ばれなかったとはいえ、この日は会社を休んだり子供を預けたりして選任式に参加しているわけです。お時間を頂戴したわけですから、この選任手続きにも交通費と日当がでます。この日の日当は4000円です。おそらく全国共通であると思います。まあ、報酬を貰えて当然という発想はあまり持ちたくないですが。
裁判員・補充裁判員に選ばれた後の流れ
裁判員6名・補充裁判員2名に選ばれた計8名はさらに手続きが続きます。
係員に案内されるまま、8名で別室に行きます。裁判長他、裁判に関わる方10名ほどが待っています。
決められた席に座ると裁判所側から簡単な挨拶があり、その後8人は立ち上がり一斉に声を出し「宣誓」をします。宣誓と言っても、プリントに書かれた「公平公正に裁判をします」という旨の文章を声を出して読むだけです。
その後、今後の裁判期間中の私たちの本拠地となる「評議室」に案内されます。
※写真はイメージです。ただ、かなりこれに近いです。
ここで初めて「裁判長」「裁判官2名」「裁判員6名」「補充裁判員2名」計11名が集まります。この裁判を共に行っていくメンバーです。
裁判員と補充裁判員の違いとは?
- 法廷内で、裁判長と裁判官2名、裁判員6名は横一列に並びますが、補充裁判員は後ろの列に2名並びます。
- 被告人への直接の質問は補充裁判員にはできません。裁判官を通します。
- 評議の際の決定が多数決になった場合、補充裁判員の票は考慮されません。
- 判決の言い渡しの際は法廷内の傍聴人席に座ります。
それ以外の部分に関しては、裁判員となんら変わりありません。万が一、裁判員がトラブルで欠けてしまった場合には、補充裁判員が裁判員としての立場になります。したがって、全ての評議、裁判に立ち会います。
さて、評議室に入ってからは以下の流れで進みます
1、自己紹介
まずはありがちですが、「裁判長」「裁判官2名」「裁判員6名」「補充裁判員2名」計11名がそれぞれ自己紹介をします。
一応その前にプライバシーの観点から「名前で呼び合うことに問題がないか?」の確認がなされますが、「裁判員1」の方、「補充裁判員2」の方などという呼び方は評議の妨げになりますし、これから数日間をともにするメンバーですので、特に異議を唱える方はいませんでした。
それぞれが簡単に、現在の仕事や裁判員に選ばれての所感などを述べます。
2、裁判官をするにあたっての質問や評議室の使い方
いざ選ばれるといろいろと不安や質問が出てくるもの。ここでは時間をたっぷりとっていろんな質問に答えてくれます。
また評議室の使い方なども教えてもらえます。
- ロッカー(一人一つ与えられるが鍵の持ち帰りNG)
- お菓子(置いてあるものは自由に食べてOK)
- ドリンクセット(ポットと、コーヒーやお茶)
- 筆記用具、メモ帳完備(ここでメモした内容は持ち出し厳禁)
- 自分専用のファイル
- ブランケット
- 六法全書
- 雑誌多数
- 冷蔵庫・冷凍庫あり
などなど、十分なほど設備は整っています。
3、裁判の流れの説明
なかなか普通の人生をしていると右も左もわからない裁判。スケジュールも裁判の内容によって変わります。ここでは、今回の事件の裁判の流れを予定表を見ながら確認していきます。
4、実際に法廷に行き自分の席を確認
イラストはくの字になっていますが実際はまっすぐな横並び。裁判長が中央、両脇に裁判官、そのさらに脇に3名ずつ裁判員が並びます。その前に書記官、速記が座ります。
一度裁判が始まれば、終了するまでその法廷はその裁判でしか使用しません。実際に使う法廷に行き、自分の席を確認、椅子の高さなどを調整します。
その後、実際の裁判に見立てて、入廷・退廷の練習を2度ほど練習します。誰もいないのに正直かなり緊張します。
5、食事の取り決め
裁判所にもよりますが、この裁判所は近くにコンビニがないため、自分で買ってくるか、裁判所が用意してくれるお弁当を事前注文しておくしかありませんでした。この裁判所が注文する弁当は1食390円でした。まあ、普通のお弁当です。
裁判所内には食堂や売店こそありますが、被告人の関係者と遭遇する可能性があるため、裁判員は出来る限り利用を控えることを推奨されます。
参考までに私が食べたある日のお昼ご飯です。
390円で、まあまあのご飯でした。期間中一番マシだった日の昼食です。
6、裁判期間中のルール確認
裁判期間中は様々なルールがあります。
- トイレは決められたフロアのものを使用
- 喫煙所も同様
- 食堂や売店は避ける
- 評議室以外では、裁判に関する会話NG
上記は、裁判官としてトラブルから自分の身を守るため。
- 評議室と法廷間の通路では基本私語禁止
- 評議室内の会話やメモは非公開かつ持ち出し禁止
- 帰り道一緒になった裁判員同士の裁判に関する会話NG
上記は情報漏えいを防ぐため。
その他、念のため常識的な細かな取り決めをします。
7、裁判員カードとホットラインカード
この日に、裁判員カードとホットラインカードが配布されます。
裁判員カードとは?
裁判期間中は、毎日裁判所に行ったらこちらのカードを提示し、出席確認をされます。こちらを提示すると、係りの人がチェックしてくれるようになっています。その後自分たちの本拠地である評議室に向かいます。最終日に回収されます。
ホットラインカードとは?
これから裁判員として、普段の生活とは全く違う体験をほぼ毎日していきます。法廷では多数の方の前に立ち、時には発言をしたり、目を背けたくなるような証拠写真を目にしたりと、ストレスに感じる方も多いとおもいます。そんな時にはこちらにご相談くださいという電話番号が記載されたカードです。また、裁判所から何か緊急の伝言がある場合はこの番号からかかってきます。
裁判員に選ばれたこの日の日当は?
裁判員に選ばれた人の選任手続きの日の日当は5740円です。大きな時間の差がない限りはこの金額になると思います。もちろん交通費もでます。ただ、裁判員・補充裁判員に選ばれた方は、裁判員の任務最終日後数日後にまとめて全日程分が支払われます。
この日の終了は12時過ぎでした。かなり盛りだくさんだったのですが、意外に午前中で全ての手続きが終了しました。
裁判員裁判いよいよスタート
さあ、そして次回からはいよいよ裁判員裁判スタートしてからの全日程をレポートしていきます。裁判員期間中は毎日新しいことだらけであっという間に終わります。裁判という非日常の中でどんどん成長していく自分と、終わった後の充足感と達成感は相当です。
また、「え?そうなの??」という裁判い関わる面白い豆知識も得ましたので記載していきます。例えば
「お相撲さんが裁判員になり、浴衣姿のまま法廷に立った」
「裁判長の席には木槌が設置されているいると思われがちだが、日本の法廷には木槌はない」
などです。
それでは次のページで早速、裁判員裁判の体験記をレポートしていきます。
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