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たかがバイトが、コンビニおでんの売上を上げることに本気になった話

こんばんは。

元セブンイレブンの店員です。

 

いきなりですが、

「今、仕事楽しいですか?」

 

 

もしもそうでないとしたら、もしかしたらこの記事が少しは役に立つかもしれません。

 

こんな私が、たかがアルバイト時代に経験したことが、

もしかしたら世の中のやる気を出せないアルバイトさんや、

あるいは経営難に苦しむ会社を救えるのではないかと思い、恐れ多くも

たかがアルバイトの本気というものを書かせていただきます。

 

たかがバイトが、コンビニおでんの売上を上げることに本気になった話

 

私は当時18歳19歳くらい。お笑いを目指して上京するためにコンビニセブンイレブンでフリーターとしてアルバイトをしていました。

とくにやる気がなかったわけでもなければ、あった訳でもありません。

毎日のように店にいましたから、ある程度責任者として仕事も任されていましたしクレーム処理も担当していました。お客様はほとんど口を聞くほどの仲。業者様とも毎日楽しくおしゃべりをして楽しくバイトをしていました。

そんな中、私の心に火を灯す衝撃の言葉を浴びせられたのです。

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私がセブンイレブンで衝撃を受けた言葉

もう15年以上前のことですから今のシステムがどうなのかはわかりませんが、セブンイレブンにはいわゆる担当営業のFC(フィールドカウンセラー)という人がいます。

その方が当時19歳のアルバイトの私に突然言い放った一言。

「この店、おでんの売り上げが弱いよね。おでんの売り上げ、3倍にしてもらっていい?」

この発言に、あなたがアルバイトならなんと答えるでしょうか?

「は?なんで私が?私ただのバイトですよ?」

「どうやって?買うか買わないかはお客さん次第だし。」

「おでん売れるとめんどくせんだよな。レジに行列できるし。。。」

「売り上げ上がったって、うちら忙しだけだし。」

おそらく多くの場合が、とってつけたような自分の正義を振りかざし、逃げに走るでしょう。

そしてきっと、

「はぁ、わかりました。。。」

なんて、その場しのぎの回答をして、結局今まで通りに退勤の時間が来るのを待ちながらレジを打つだけ。

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おでんの売り上げ3倍にしてもらっていい?との発言に

「わかりました。」と私はただ即答しました。

もちろん、やり方なんてわからないし、勝算もない。そもそも今のおでんの売り上げがいくらなのかすら知りません。

でも、その即答には理由がありました。

 

私にはこの頭の良さそうなFCには絶対に負けないモノが1つだけあったのです。

それは、

私はあなたよりも、このお店のこと、お客様のことを知っている

ということです。

  • 店内の商品の位置
  • 掃除をする時間帯
  • お世話になっている多くの業者様の顔
  • あのお客さんの来る時間と好みのタバコ
  • 文句を言いながら楽しそうに集荷に来る宅急便の人
  • いつも、お金を払っているのに私に「ありがとう!」と言って買い物をするOL
  • 内気そうだった女の子が、どんどん美人になって、ある日彼氏と一緒に来店したこと
  • 10円のお釣りを毎回5円玉2枚でくれというおじさん
  • コピーの取り方が分からなくて、わざと私のいる時間に来店して教えてもらう気満々のおじいちゃん
  • バイト仲間の失恋

週5で、ほぼ全時間帯のシフトをこなしていた私にとって、この小さなお店のあらゆる構造から、毎日起こる人間ドラマや歴史、その多くを見てきました。

 

だから、

こんな

たまにしかこないFCの言葉に、「できません」と答えるのがなんとなく悔しかった

のです。

 

念のため私はFCに聞きました。

「どうしたらいいですか?」

「やり方は任せる。」

の一言。

ぶっ飛ばしてやろうかとも思いましたが、こいつに勝つには売り上げで勝つしかあるまいと思い拳をしまいました。

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おでんの売り上げを上げるために私がやったこと

売り上げデータの参照

FCとオーナーにお願いし、売り上げデータの見方、SC(ストアーコンピューター)の使い方を教えてもらいました。

これは当然です。

やみくもに売ったって、最初は結果が出るかもしれませんが、目標と結果は具体的な数値で設定しなければ息切れしてしまいます。

そして、人間の発想はうまくできていて、おでんを売ろうと懸命になっていると、おでんへ意識が集中して、いつも通りの数値なのに「売れている感覚」になってしまうのです。

数値は、感情に流されない唯一のデータ

であるとして、私はその店ではオーナーにしか持たされていなかった権限を与えてもらいました。

試食の実施(無責任なセールスの廃止)

自分が食べたこともないものをセールスすることほど無責任なことはありません。

そんな無責任な情報に踊らされて買ってしまったお客様はどう思うでしょうか?

自分は当然のこと、他のアルバイトにも試食をさせました。

しかも自腹で。

私1人でおでんの売り上げを上げるのには限界があります。24時間営業のコンビニ。私が休みの日、私のいない時間帯も当然あります。

なので、この任務を遂行するにはどうしても仲間が必要だったのです。その仲間とは、もちろんアルバイトの同僚です。彼らを巻き込む必要がありました。

もちろん仲は良かったですが、なかなかおでんの売り上げアップに火をつけることは困難です。

私の熱意を知ってもらうためにも、私は身銭を切って彼らにおでんを買って与えました。

当時15年も前の、学生だらけのコンビニです。一個100円のおでんをそんなに食べていません。少なくとも全種類の種を食べるような金持ちはいませんでした。

そういったこともあり、思ったより簡単に彼らの火をつけることができました。

そして、試食をすることで彼らはお客様に「おいしかったですよー。」と、自信を持ってお勧めできるようになるのです。

なにより私は、学生らがあまり食べたこともないコンビニおでんをお客様にセールスさせることが嫌でした。

得体の知れない商品をセールスし続ければ、セールスマンはいずれその商品に喰われる

その正義のために、まずは自分が食べること。そして商品を知ることを実施しました。

 

廃棄を恐れない(美味しいものだけを売る)

私の目標は売り上げアップです。

利益アップではありません。

この意味がわかりますでしょうか?

廃棄はロスです。売れるものの期限が切れて捨てる。そうなれば利益はゼロ、それどころか仕入れ値分のマイナスです。

だから多くのコンビニでは廃棄を嫌がり、古くなったものから売ります。

古くなったまずいおでんを食べれば、お客様は「コンビニおでんはもう食べない」と、リピートしなくなります。

明日も、明後日も、美味しければまた買ってくれたかもしれなかったのに、

明日も、明後日も、もう2度と買ってはくれなくなるのです。

 

ありがたいことに私に与えられた目標は売り上げアップのただ1つだけです。

 

「リピーターなき商品に売り上げアップはありえない。」

という名の正義の名の下に、

私は古いおでんを徹底的に廃棄しました。オーナーに怒られようとも。

 

おでんの見た目を変える(ボリュームの重要性)

このお店は廃棄をとにかく嫌がりました。

だから、おでんの仕込みもいつも少量でした。

結果、

鍋の中はすっかすか、申し訳なさそうにぷかぷかと浮かぶおでんの種たち。

そんな鍋の中をみて、おでんを買ってくれるのは、

「はじめからおでんを買おうと思っていたお客様」だけです。

それは売ったのではなく、売れたのです。

棚から牡丹餅に満足する商人は、時代の流れにのっていずれ消滅します。

 

廃棄したくないから少ししか仕込まない。

→たくさん仕込まないから美味しそうじゃない。

→美味しそうじゃないから売れない。

→売れないから廃棄する。

→廃棄するの嫌だからもっと仕込みを減らす。

 

負のスパイラルの始まりです。

私はこの負のスパイラルをどうしても断ち切る必要がありました。

そこで私は、オーナーに怒られることを覚悟で、鍋いっぱいにおでんを仕込んでやりました。

周囲のバイトは、「さすがにそれは、、、、やばいんじゃ」と言いながらちょっと笑っていました。

 

別にいい。売れば文句ないだろう。

ある種、この行為は自分への戒めでもありました。

やっちまった。もう売るしかない、売るしかない、売るしかない。。。。

 

しかし、それが吉と出ました。

ボリュームたっぷりに鍋に盛られ、昆布出汁の良い香りとともに、ゆらゆらと白い湯気をあげるおでん。

肌寒い時期に来店した客はどう思うでしょうか?

買う気がなくても、あるいは実際に買わなくても、

「おでんを見てしまう」

ものです。

この、「見てしまう」と行為は非常に大事で、

商品や情報が溢れる世の中、見てすらもらえないまま機会損失、チャンスすら与えられない商品が山ほどあるのです。

こうして私は、強制的におでんにチャンスを与えたのです。

ちなみに私はこれで、おでんの消費サイクルを上げ、それまで1つだったおでん鍋をもう1つ用意し、今までの2倍のスペースでおでんを販売しました。

ロスを恐れて売上を投げ捨てれば、その事業はいずれ縮小する

商品。特に食品はサイクルが大事。うまいものをうまい時に食べてもらうには、時に強制的なテコ入れが必要なのです。

声がけ(言葉選びとタイミング命のセールス)

さて、こうして、このコンビニには、

  1. おでんを実際に食べ、その美味しさを知っている店員と、
  2. いつでも美味しいおでんが、
  3. いつでも鍋いっぱいに盛られている

そんなコンビニになりました。

おそらくはこれだけでもおでんの売り上げは上がるでしょう。しかし私はセールスの手を休めません。

むしろここからがセールスの肝なのです。

「おいしそうだな、あったかそうだな、どうしようかな。」

と、悩んでいるお客様に声をかけて、そのお客様の迷っている背中を最高のタイミングで、優しく押してやるのです。

 

声がけの最高のタイミングとは

お客様がおでんを見つめた3秒後です。

おでんを見つめる、

「美味しそう、温かそう、」

「どうしよう、買おうかな」

この思考まで約3秒です。

 

これより声がけが早ければ、驚かれます。

これより遅すぎれば、お客様は自分で買うか買わないかの決断を出してしまいます。

 

お客様が答えを出す寸前に、

「いかがですか?」

と声を掛けることで、購入率を一気に高めることができます。

声がけのポイントは優しく、さりげなく。

私は、服屋や、携帯ショップのガツガツとくるセールスが苦手です。

もっとゆっくり見て、聞きたいことがみつかってから質問したいのに、まだ何も見ていないうちから「それは〇〇です」などというセールスをされると、購買意欲と、期待感を絶たれます。

コンビニのおでんも同じです。

「おいしそうだなー」

程度のお客様に、

「しっかり味がしみているおでんです!いかがですか!!」

なんてガツガツいったらお客様も驚いて、「いや、いいです。。。」ってなってしまいます。

 

やさしく、さりげなく、それまでの接客と同じ声のトーンで、

「おでん、いかがですかー?」

と、声がけをします。

こうすることによって、お客様はそのセールトークをいやらしいセールストークとして感じません。

自然とお客様の耳に入ってくる言葉として、壁を作らずにこちらの話を聞いてくれるようになるのです。

言葉選びを工夫する

「おでんいかがですか?」

も、シンプルで悪くはないのですが、ここは一歩先に行ってしまうのも手です。

例えば、

「寒くなってきたので、おいしそうですよね。お1ついかがですか?」

という共感型トーク

「〇〇だけもう少しですが、他はすべてちょうど今が食べごろですよ?」

という、売れ筋でない商品をあえて1つ犠牲にしながら、商品全体の評価をあげて購買意欲を高める、犠牲対価型トーク

また、「ちょうど今が、食べごろ」という、期間限定型トーク

「ご準備しますよ。大根ですか?玉子にしましょうか?」

という、買うつもりはなかったのに、選択肢を与えられることで、「どちらにしようか」と悩んで、いつのまにか「買うことだけは決まっている」という、購入前提の選択肢型トーク

※服屋で、まだ買うと決めていない服を「赤と緑ならどちらのお色味がお好みですか?」というセールスで購買させるのと同じ原理です。迷いは「買うか買わないか」ではなく、「どっちの色を買おうか」に、いつのまにかシフトチェンジされているのです。

 

などなどがあります。

これらを、お客様によってアレンジしていきます。

 

また、おでんに関して言えば、

「是非1つだけでもいかがですか?」

というセールストークも効果的です。

これは、

「おでん、一個だけ頼んだら店員さんに面倒かけちゃうな。かといってたくさんは食べられないし」

という、お客様の店員への気遣いを先読みするトークです。

いいんですよ!1つだけでも是非やらせてください!

と、アピールすることで、お客様の店員への気遣いをなくしてもらいます。

 

これらのテクニックの使用には、やはり前述した

声がけのタイミングと、声のトーンは必ず守ることが大切です。

 

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セールスをしながらも常に心にあったこと

きれい事ではなく、

「お客さんにおいしいおでんを食べて欲しい」

ということ。

食べてもらえば絶対にわかる。

食べてもらえればきっとまたリピートしてくれる。

 

そのために、

美味しくなくなったらすぐに廃棄したし、鍋いっぱいに具材を入れて、いろんな種の味が染みた出汁のおでんを準備しました。

 

かくして、私のおでんセールスの日々は過ぎ、

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結果:おでんの売り上げは目標をはるかに超え5倍に

一ヶ月後、FCが来店。

とてつもない売り上げになったおでんのデータを知り、

 

「君、一体なにをやったの!!?」

血相を変えて聞いてくるFC。

「ご覧の通りです。いろいろとやってみました。」

そう言って、カラカラと笑う私。

結果から言えば、この勝負、両者とも勝ちだ。

 

FCにしてみれば、

たった一言、

「3倍にしてもらっていい?」

という言葉だけで、私というアルバイトの心に火をつけたのは、このFCの作戦だったのかもしれない。あえてオーナーではなく、1人のアルバイトに責任を持たせるという作戦。

結果、彼は売り上げを勝ち取ったし、レジ前でのセールスは客単価をダイレクトに上げる

「売り上げ」=「客数」×「客単価」

この方程式はいつの時代も変わらない。

そしてこのシンプルな方程式に経営者はいつも悩む。その永遠のテーマを解決するのは、なにも劇的なヒット商品やイノベーションばかりではなく、時に意外にもちっぽけな1人のアルバイトだったりする

 

そしてこの戦いで私が勝ち取ったのは、

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社会人になり約15年。コンビニのバイトから得たモノ

たかがバイト、金稼ぎ、努力をしたって給料はたいしてかわらず、いつかはどうせ辞める。

そんな思いでアルバイトをしていたのなら、

こんなに社会人を楽しめていなかったと思う。

 

多分、

「たかがバイト。就職したらその会社で本気出そう」

なんて言っている奴は、

就職しても本気出せないと思う。

「どうせ偉くなれないし、どうせ俺の会社じゃないし、嫌になったら辞めよう」

って。

 

社会人になった私は、どんな会社、どんな仕事、どんな部署にいたって、

自分はセールスに携わっていると実感する

なぜなら、

すべての企業には売るべき商品が存在し、顧客が存在するのだから。

なぜなら、

営業職をしようとも、たとえ事務課にいようとも、顧客の笑顔を想像することはできるのだから。

 

だから頑張れる。だから楽しい。

だから、本気になれる。

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コンビニおでんを本気でセールスした、たかがバイトの格言

 

セールスとは、お客様への愛情です。

だから、

お客様の笑顔を想像して働いているうちは、あなたも立派なセールスマンです。

 

そしてあの時代にも、このおでんの味が美味しかったことに感謝。

セブンイレブンの商品開発の皆様、そしておでん種の材料になるものを育てる農家や漁師の方々、それに携わる多くの人々。心より感謝を申し上げます。

おかげで、立派ではないけれど、一生懸命な社会人になれました。

長文をここまでお読みいただきありがとうございました。

是非、私が運営するセブンイレブン商品紹介サイトもご覧ください。

それではまた。

セブンイレブンおでん

 

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